ダイテック中内です。

このところ、関西ではとても暑く、関東では雨が続いていると聞きます。
地球温暖化の影響なのでしょうね。
今世紀末までに上昇温度を2℃以下にするために排出できるCO2の量は2010年の段階で残り1兆トンらしいです。
2010年に排出したCO2は世界でおおよそ300億トンなので、この調子で排出し続けると30年足らずで1兆トンに達してしまうことになります。
仮に2℃を上回った場合の影響は干ばつや湿潤地域の降雨量の増大のとどまらず、海面の上昇や伴う水質の低下、蚊などの害虫による病気の蔓延、食料不足など大きなものになると予測されています。
これらの影響は我々の生活コストの上昇を引き起こすことになるのです。例えば、食料は高騰し食べるためには多額の金員が必要になります。実際その例は現れてきており、以前にも書きましたが十数年前に某商社の食品部長は世界市場で日本が買える大豆の質はどんどん下がっている。なぜなら新興国が大豆を金にあかせて購入するからだと言っていましたが、大豆に限らず世界で供給される食料の量が減少すれば、当然経済力のある国だけが買えることになります。
また、海面の上昇は疫病の蔓延だけにとどまらず、世界の港湾や海軍基地のあり方にも影響を与えます。
数年前にオバマ政権時のケリー国務長官(当時)がアメリカの新聞のインタビュ-で、地球温暖化により海面が80㎝上昇すれば、世界中のアメリカ海軍基地の護岸をやり直すか、基地自体を内陸部に移動させる必要があり、その予算は天文学的なものとなると警告しています。
世界の市場で食料を買う力や護岸を修復する予算は殆ど我々の税金で賄われなければなりません。
当然、生活するコストが増大することになります。ますます生活に困難さが増加します。
先進国はまだしも新興国や人口を多く抱える国々にとっては国家の基盤さえ危うくなり、結局は力による争奪合戦、つまりは戦争へと突き進んでいくことになるのでしょう。
今流行の憲法改正の議論していても、どのように条文を書き換えようとも、または今の憲法を変えなくても結局飢餓は必ず戦争を引き起こします。貴方の家族が飢餓により死んでいく姿を想像してご覧なさい。そこに食料があれば、争奪することに誰も疑問を呈しないし、誰もその行為を批判は出来ないでしょう。

話は変わりますが、日本の観光庁は今年7月の訪日観光客の1月の総数が268万人を超えた、2020年に4000万人にする計画に対し順調に推移していると胸を張って発表しています。
訪日観光客が増えて日本文化(残り少ない・・)を理解してもらうことは悪いことではないと思います。
ただ・・・はたして彼らの日本で過ごす社会コストは誰が負担するのでしょうか?
私は以前に観光業に従事していたので、客数が増えることには、まぁ反対ではないですが、安い客ばかり来てもらっても結局はコスト倒れになってしまう。特に労働集約産業ですから働く人達に何も恩恵を与えることができないと思うのです。今、働き方改革を標榜して生産性を上げると云う政府方針とは全く逆の結果になっていると思うのです。(それをおもてなしと云うのでしょうか?私は違うと思います。)
数年前に、観光庁の医療ビザ解禁の時の会議にオブザーバーですべて出席したことがあります。
流石に役人というのは、目標設定の仕方も上手で人数設定だけで、中身の無い会議だったことを覚えています。
昭和女子医大の先生方に議論をさせて、議論したと云う形だけ取って有識者が会議した総意だと仕上げるその手法は見事なものでした。反対意見や懐疑的な意見が出ても当時の初代観光庁長官さまは”国のためにやるんだ!”と云う精神論しか言わず、国のためって何なのかとかの説明や具体的な手法についての検討もなく集まった先生方に恫喝するような話し方で押し通したのを目の当たりにしました。
まるで、先の戦争の時の大本営って云うのはこんな感じだったのだろうな。ミッドウェイ海戦や、沖縄戦、南方での戦線やインパール作戦などもこうやって反対意見や懐疑的な意見を”お国のためだ!”とか大本営の偉いさんは言って恫喝して決まったのだろうな。と・・・日本人はちっとも変わっちゃいないんだなと思ったことがあります。
今は、訪日観光客数4000万人という数字だけを彼らは目標にしているのです。それを達成するために誰でも簡単にできる方法であるビザ発給条件を反対する入国管理局を安倍総理が云っている目標なんだと恫喝して緩和しただけなのです。
客単価など目標にもせず、客単価を上げるのは訪日観光客を受け入れる施設や地方自治体の役割だと決めつけているというより、この点は自分たちも出来ないから、またするためには自分たちも努力が必要だから目標として設定しないで、パンフレット創ったり海外の観光博覧会に云ったりしている以外、結局何にもしていないのです。
結果として、何が起こっているか・・・
受け入れたところ、特に地方の社会コストが増大しているのです。
今年の京都祇園祭は外国人観光課客で溢れたいたと聴きます。知り合いの京都の人が嘆いていました。
祭りのあとのゴミの山、、、、、京都府・京都市の清掃業務だけではとても人手が足りず、京都の企業さんたちがNPOをつくって協賛して清掃業者を雇って清掃したそうです。
彼は、永年京都に住んでいますが、、外国人観光客が多くて、昔の京都の風情は無いし、街は汚くなる一方だし、もう京都を離れようかと思うとこぼしていました。
実際に世界中でこのようなことは起こっています。世界有数の観光地であるベニスやバルセロナなどは、はやりの民泊とかで街は汚れるし、賃貸アパートの家賃は上がるし、夜は観光客が騒いで五月蝿いし、観光客が残した清掃や遺産の修復で税金は上がるしで、住民コストは増大して、反対に土産物は安いものしか買わないし、食事はファストフードだけ、宿泊は民泊で、経済的恩恵は殆ど無いので引っ越す住民が増えていると聞きます。イタリア人やスペイン人の国内観光客は外国人観光客が屯しているベニスやバルセロナなどの観光地の評価は低く、減少していると聞きます。
まさに京都もそうなりつつある、京都だけではなく日本全体がそうなりつつあるのではないでしょうか。
私は今関西に住んでいますが、大阪市は民泊特区とかに指定されて民泊施設の建設ラッシュです。古いビルを改装して・・や、知り合いなどは事務所を追い出されてビル一棟民泊施設に早変わりしたケースもあります。
大阪人はバブルのときもそうでしたが、みんなでやるときは一斉に一気にやってしまう傾向があるのは確かですが、民泊施設建設のための地上げまで始まっています。
当然、施設が増えれば競争が激しくなるわけで宿泊費も1泊1000円のところもあるやに聞いています。
食事は、町中にあるスーパーやコンビニでのカップラーメン・・その食べたあとのゴミが放置されたままになっているとか。。
このままですと、大阪市内にかぎらず、この傾向は周辺地域へ広がって行くのではないか、周辺地域は高齢化による空き家が増えているとマスコミで言うものだから、空き家を民泊施設にすればよいではないかと、考える輩も出てくる始末です。貴方の住んでいる隣が民泊施設になって夜でも大騒ぎしたり、ゴミを放置したり、中には道路で用をたしたりする光景が、そしてそのコストは観光客に払わせるのではなく、住んでいる貴方がた住民が払うことになる。そんな未来がすぐそこに来ているのです。
ベニスやバルセロナの人たちのようにそのコストを払えないで、あるいは払う気がなくて住んでいるところを捨てる日本人がこれから多く出てくる気がします。
実は、ヨーロッパの移民排斥運動の原因の一つにもベニスやバルセロナの人たちのように”外国人に追い出された””故郷を捨てざるを得ない”と云った考え方もあるのではないでしょうか。
増え続ける社会コストと経済的恩恵とを秤にかけて訪日観光客の数や質を考える必要があるのではないでしょうか。
確かに、訪日観光客の経済効果なる数字が発表されることはありますが、この数字の根拠は一体何なでしょう。訪日観光客平均消費単価×訪日観光客数なのでしょうが、日本に来ている外国人観光客は本当に一人あたりどのくらいの消費をしているのか把握できているのでしょうか。大雑把にこのくらいという感じなのでしょうね。あるいは、前回の消費動向から伸びた分が観光客分と考えているのでしょうか。
いずれにせよ、不明瞭な数字だと断ぜざるを得ません。

冒頭にお話した地球温暖化の問題も、この訪日観光客の問題もどちらも、私たち自身の問題なのです。
私達自身が、社会的なコストを払っていかなければならないのです。
まだ、地球温暖化問題は世界の人たちでコストを分け合える可能性はありますが、訪日観光客の問題は分かち合えるのはこの国に住んでいる人たちだけです。

訪日観光客が年間2000万人を超えた程度の現在でもこんな状態です。
もうそろそろ、訪日観光客の誘致は止めて誰が決めたか知りませんが、またなんの根拠で決めたか知りませんが訪日観光客数4000万人(明治時代の日本の人口に匹敵。この数字はどれほど多い数字なのか。。)と云う馬鹿な目標は捨てたほうが良いのではないでしょうか。
また、マスコミや政府の発表や数字を鵜呑みにするのではなく、彼らが何を意図しているのかを考えるべきだと思います。おおよそ、政治家や東大出た官僚とかいう人種は恫喝に弱い覚悟のない人が多く、その場しのぎだったり、やったふりだけするあまり賢くない人が多い気がします。

日本には技術とそれを支えてきた島国日本独特の文化・価値観があります。
ただただ数のマジックだけに惑わされる目標や今後の日本のあり方を考えるのではなく、もっと生産性の高い社会を自分たちだけで創れるはずです。
江戸時代には3000万人くらいの人口で世界に誇れる文化を残すことが出来たのだし、工芸品をはじめとした技術も残しているのだし、工業化を始めた以後の明治・大正時代でも全国人口4000万人から5500万人くらいで、戦前には世界に冠たるゼロ戦や空母・戦艦なども製造したのだし、この経験から見ても、生産性を高めることは出来る。大丈夫だと信じています。
確かにGDPの6割は消費ですから人口が減少することは消費が減少して国力が落ちるという議論もあるでしょう。しかしながら、例えば地球温暖化を防止するための産業が造る全く新しいイノベーションによる製品や商品だったり、宇宙産業から生み出される今までにない製品だったり、それがないと世界中の何かが動かないというようなワールドスタンダードな商品や製品であれば日本人の消費だけではなく輸出の比率をかつてのように高めることになっても、輸出の比率を下げろと言われることもない多国間関係を築くことができるのではないかと信じたいと思います。

生産性の低い観光業なんてものを国の基幹産業するなんて馬鹿げたことを考えず、もっと新しいことにチャレンジできる。また新しい技術から生み出される商品やサービスによって成り立つ国造りを考えるべきだと思います。
でなければ、近い将来、この国の中にも外国人の排斥運動が始まることになって社会が不安定なものになるのではないかと危惧しています。その恐れは確実にしかも静かに私達の身近に迫っているのです。
実際に小さな軋轢は各地で出始めているように思います。電車内、駅構内、コンビニ、街中で我が物顔の外国人観光客に対する日本人の意識が少しづつ変化してきているのを感じます。

もうそろそろ、訪日観光客の制限をしたほうが社会の安定ためには良いのではないかと思います。